
高級住宅街の一等地、皇城学院の広大な敷地内に、その豪邸は建っている。
皇城邸。皇城学院、理事長の住まいだ。
贅をこらした威風堂々たる佇まいは、まさしく『お城のような』と形容するに相応しかった。
さて、そんな『お城』には、二人の姫君がいる。
皇城瑠璃、皇城瞑の姉妹である。
姉の瑠璃(は高等部の三年生、風紀委員長を務める大人びた少女。
並みの男子よりもずっと背が高い。眼光は鋭く、勝ち気な印象。
手入れの行き届いたボリュームたっぷりの髪を、豪勢な縦ロールにしているのが特徴だ。
周囲から頼られる女王様。そんな風情の少女だった。
妹の瞑(は中等部の一年生、今年入学したばかりの十二歳。
つい数ヶ月前まで小学校に通っていた、年相応に幼い容姿の少女である。
くりくりとした大きな瞳。絹のように艶やかな黒髪。
腕、脚、腰……少女の肢体を構成する要素の一つ一つが細く、華奢で、触れるのをためらってしまうよう
な、壊れ物のような儚さがある。
しかし彼女がその愛らしい美貌に浮かべるのは、天真爛漫な笑顔ではなく、小悪魔めいた艶笑だ。
小さな唇から零れ落ちるのは、黒薔薇の刺のごとく毒々しい言葉ばかり。
倒錯的な少女趣味(。黒く甘美な色気をたたえた少女だった。
そんな姉妹の日常を、垣間見てみようと思う。
八月。夏休みが始まったばかりのある日のこと。
早朝。皇城瑠璃は日課であるロードワークの帰り道、屋敷の庭園で、瞑と鉢合わせになった。
今日の瞑は、赤を基調にしたゴスロリファッション。厚底ブーツに、ピンクのパラソルをさしている。
瑠璃は、よそ行き用のおしゃれをした妹の前で足を止め、高圧的な口調で話しかける。
「あら瞑、貴女、こんなに朝早くからどこに行くのよ」
「ご機嫌よう姉さま。いつも思うんですけど、よくそんな糞ださいジャージで外を出歩けますねー。恥ずかしく
ないんですか? 汗くさいからあんまり近寄らないでくださいよね」
妹は開口一番、悪態を吐いた。
姉も負けずに言い返す。
「は……なによ。私のセンスに文句をつけようっていうの、貴女? ……だいたい私は質問してるのよ?
『こんなに朝早くからどこに行くの?』ってね。殴られる前にさっさと答えなさいよ」
「そんなの姉さまには関係ないでしょ、どーしてわざわざ教えなきゃなんないんですかぁ?」
「いちいち口答えしないで頂戴! ほんっっと生意気ね貴女って! ああもうっ、話しかけなきゃよかった
わ! せっかく気分よく走ってきたのに、貴女のせいで一日の初めからイライラする羽目になったじゃない
の!! 私の爽やかな朝をどうしてくれるのよ!?」
「ハァ? そっちが勝手に話しかけてきたんでしょ? なに人のせいにしてるんですかあ」
ぎりぎりキシャーと牙を剥いて、姉妹二人は睨み合った。
この家では頻繁に見られる光景である。
皇城姉妹は、壊滅的に仲が悪いのだ。
「もう一度だけ聞いてあげる。瞑(、こんなに朝早くからどこに行くの(?」
瑠璃は、地獄の底から響いてくるような声色で、ゆっくりと言った。
瞑は、ぺっとつばを吐き出す真似をして、それからバカにしたように指を振った。
「別に隠してるわけじゃないし、教えてあげてもいいですけどぉ――。いいですか姉さま、これからわたし
は、九条院先輩とデートなんです。だ・か・ら、朝からデカブツと遊んであげる暇はないんですぅ。分かりまし
た? 分かったらその無駄に大きな身体を、さっさと退けてくださいねっ」
「はぁん、瞑。あんた妹の分際でずいぶんな口をきくじゃないの、あ? ふざけんじゃないわよ――私の髪
型真似したりして、最近やっと可愛げが出てきたかなと思ってたのに、ぜんッぜん変わってないじゃない
の!! どういうことよ!!」
瞑の髪型は、ツインテールに結わいた髪に縦ロールをかけたものだ。
彼女が髪型を変えたのは先月のことで、瑠璃は自分の真似をする妹を、ちょっと微笑ましいような照れ
臭いような気持ちで眺めていたのだった。
いまだって喧嘩ばかりでなく、たまには姉妹らしく言葉を交わそうという意図を持って話しかけてあげたの
だ。だっていうのに、なんだ、このむかつく態度は。
(っざけんじゃねえわよ! ブチ殺されたいのかしら、このクソ餓鬼ががががが!!)
などと公衆の面前ではとても口にできないような罵詈雑言を胸に抱え、はらわたを煮えくりかえらせる瑠
璃。
瞑は、自分の縦ロールをくるりと指に巻き付けて、べぇっと舌を出した。
「姉さまったらおバカさん♪ なに勘違いしてるんですか? この髪型は別に姉さまの真似なんかじゃない
ですぅ〜だ」
「じゃあなンだってのよ」
片眉を跳ね上げて、恐い顔をつくる瑠璃。この形相を見れば、たいていの人間は怯むだろう。
対して瞑は恋する乙女のように、ぽっと頬を赤らめて俯く。
「……九条院(先輩が、似合うっておっしゃるから……」
「……はあ?」
まるで人が変わったように大人しくなった瞑の態度に、瑠璃は面食らった。
同時に、この悪魔のような妹に、こんな顔をさせてしまえるヤツのことが、たまらなく気になった。
なにやら胸がムカムカしてくる。先ほどまでとは違うところから、怒りに似た感情が込み上げてきた。
瑠璃は憤然と言ったものだ。
「イラつくわ。ねえ瞑、この私が聞いてあげるから、ありがたくお答えなさい。その九条院って誰なの? 中
等部? それとも高等部? 何年何組のどんな男っ!?」
「うざいなあ、こんなそばで怒鳴らないでくださいよ姉さま。誰って……中等部三年一組の、九条院アリス先
輩です……あんなにお美しくて、人望もあって、有名でいらっしゃるのに。やだ……まさか知らないんです
か、姉さまったら」
瞑は、うっとりと瞳を潤ませる。その九条院とやらへの、尊敬の眼差しだった。
気に入らない。ものすごーく気に入らない。半端じゃなく気に入らない。
いつもこの姉に対しては、遠慮なく侮蔑の眼差しを向けてくるくせに。
(この違いはどういうことっ!? ああんっ!?)
瑠璃は脳内で凄んだ。
「九条院アリス……? 三年一組……? ああ、桐山と同じクラスにいる、あの金髪の娘ね。知ってるわ、
直接話したことはないけれど」
「当然です。姉さまごときが軽々しく口をきける方じゃないんですよ、九条院先輩は」
「なに言ってるの毒虫。私はその九条院先輩とやらより三年も先輩で、格上で、目上なのよ。あんまり舐め
たことばかり言ってるとね、死にたいものと見なすわよ」
「姉さまこそ、たかが数年早く生まれたくらいででかい口きいてんじゃねーですよ。はっ、アンタなんかババ
アなところと身長以外じゃ、九条院先輩の足元にも及びませんねっ」
「あ、あんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
妹の暴言に、瑠璃はぷっつんした。掌を思いっきり振り上げ……ぎりぎりの自制心で、止める。
「ふううううううぎぎぎぎぎ……! っ……分かったわよ!! そんっなにお姉ちゃんよりも九条院が良いっ
て言うなら、アンタなんかもう金輪際、妹でも何でもないわ!! 今すぐどこへでも行っておしまいなさい
っ!!」
叫んだ瞬間つま先にメシッと重い衝撃が来た。瞑が、あのごっつい厚底ブーツで踏み付けてきたのだ。
「痛ったッ……この餓鬼! 何てことすんのよ!?」
「ペッ、言われなくても行きますよーだっ! じゃあ私が帰ってくるまでに、お願いですから死んでいてくださ
いねっ、お・ね・え・さ・ま!」
闇雲に振り回した瑠璃の腕をすりぬけて、瞑は踊るように駆けていく。
「っ、ちくしょ……こッのッ、アンタ帰ってきたら覚えてなさいよぉッ!」
遠ざかっていく妹の背に向けて、瑠璃は大地を震わすような怒声を張り上げたのだった。
†
一時間後。
シャワーを浴びて身支度を調えた瑠璃は、自室のソファに、脚を組んで腰掛けていた。
その手には電話の子機。呼び出し音を聞きながら、苛立たしげに膝を指で叩いている。
やがて相手が受話器を取り、男子の声が聞こえてきた。
『はい、男子寮二号館、中等部三年の桐山です』
「出るのが遅い! 人を何秒待たせてるのよ!」
『うおっと、そのキレっぷりは皇城先輩ですか。で、誰に用事ですかね。つっても寮に残ってるのは俺だけ
ですけど』
怒りを受け流すようにして答えたのは、桐山誠人(。生徒会では、中等部の代表を務めている。
瑠璃にとっては、後輩にあたる生徒だ。生徒会執行部の仲間でもある。
ちなみに男子寮は電話が共用だから、彼は『誰に用事なのか』と訪ねてきたわけだ。
「バカね、夏休みだってのに寮に詰めてるのは、せいぜい貴方ぐらいのものでしょう。察しなさいよそのくら
い」
『はあ、俺に用……っつうと生徒会の仕事ですかね』
「チッ、なあに? 私は用がなきゃ後輩に電話もかけちゃいけないわけ?」
瑠璃は険悪な口調で因縁をつけた。
『んなこた言ってませんて、でもほら、雑談するなら他にたくさんいい人いるでしょう、会長とか、副会長と
か。なんでまた珍しく俺に?』
誠人は怯むでもなく、手慣れたふうに対処した
しかしそれが地雷だった。瑠璃の心中で、髑髏スイッチがカチリとおされた。
「あいつらは二人して旅行いっちゃったわよ! 人を仲間はずれにしてね! まったく信じられないわ!」
『あー、そりゃまた……なんと言ったらいいか』
誠人は言葉を濁す。
瑠璃は勢い込んで怒りをぶちまける。
「しかも行き先を秘密にしてるのよ!? どういうことだと思う!?」
『…………行き先を教えたら、追い掛けてくるからじゃあないですかね。俺でもそうしますよ』
「何か言った!?」
『……何でもないです』
僅かな沈黙のあと、改めて瑠璃は主張する。
「とにかく――私はいま怒ってるの」
『皇城先輩がキレ気味なのは、いつものことでしょうが。何をいまさら』
「ちょっと桐山! アンタ電話口だとずいぶん横柄じゃないの!」
『そりゃまあ、電話越しならゲンコツは飛んできませんからね』
「それなら、きちんとストックしておいて、次に会ったときにまとめて喰らわせてやるわよ」
覚えていらっしゃい。瑠璃は怨念を込めて言った。
『……おっかねえなあ。で、まあ話を戻しますけど、仲間ハズレにされたのが悔しくって、俺に愚痴って憂さ
を晴らそうってわけですか、先輩は』
「そうね、概ねそのとおりよ」
『堂々と認めやがった!? なんつーはた迷惑な。俺だっていま自分の仕事やってるとこだってのに』
「あら、何やってたの貴方? 生徒会の仕事は全部、終業式前に片付けたはずだけれど」
まったく悪びれずに聞く。すると彼は、こんなことを言い出した。
『ほら、俺らが夏休みに行く、短期海外研修(のしおりを作ってるんですよ。当日、みんなに配ろうかと思い
ましてね。オススメの店とか、観光名所とか、あんまり調べてない奴らもいるでしょうし。俺なんかの手作り
でも、少しは役に立つんじゃねえかと思って』
「……なんというか、マメねえ貴方も」
感心のあまり、怒りが冷めてきてしまった。あのいちいち癪に障る現会長なんぞよりも、この後輩の方が
余程、生徒会長に相応しいように思える。
『そんなわけで、切ってもいいですかね』
「なにが『そんなわけで』よ、駄目に決まってるでしょ。そんな無礼を働いたら、私の全権限をもって潰すわ
よ」
『いやしかし、これ寮の共用電話ですし。寮に残ってるやつも、ちょっとだけですけどいますし。あんまり長
電話するわけにもいかんでしょう』
「不便ね。男子寮の個室にも電話をつける必要があるかしら」
すぐに工事の手配をする旨を伝えると、誠人は慌てて止めてきた。
『いりませんよもったいない、俺以外の連中は、みんな携帯くらい持ってますって』
「あらそう。ならこのまま話していても、なんの問題もないわね」
『…………』
誠人は黙り込んだ。
「ねえ桐山、何か言いたいことでもあるのかしら?」
『もう諦めましたよ。愚痴の続きをどうぞ』
「そう、じゃあ話してあげる。あ、そうだ、そのしおりとやらだけど、あとで私がアドバイスしてあげるわ。庶民
の桐山が一人で作ったりしたら貧乏くさくなるに決まってるもの。ありがたく思いなさいよね」
『……そりゃ助かりますね。で、お怒りの源はやっぱり、さっき言ってたあれですか』
「あんな薄情者どものことなんか、もう知らないわっ。ムカつくけどっ。それよりも妹よ。ねえ聞きなさいよ桐
山。あの子ったらね――」
瑠璃は今朝の出来事を誠人に説明した。この偉大なる姉君に対し、いかにヤツが腹に据えかねる態度
をとりやがったのか、微(に入り細(を穿(ち言って聞かせた。
すると、
『はは、なんだ、そんなこと。妹さん、可愛いもんじゃないですか』
「はん、桐山はいっつも瞑に甘いわよね。実はロリコンでしょう貴方」
鋭く指摘すると、誠人は『うっ』と呻いてしばし黙った。
『ひでえ言いがかりだ……。だいたい、たった三歳差でロリコンもないでしょうよ。俺はまったく健全です』
「……あっそう。ちなみに妹は貴方のことを、ゴブリンみたいで気持ち悪いと言っていたわ」
『ホント嫌な先輩だなアンタ!?』
「あら、私が言ったんじゃないわよ?」
『悪意をもって俺に伝えたのは他ならぬアンタじゃねえか。せっかく愚痴を聞いてやってる俺になんつー口
を利くんですか。いい加減にしねえと俺だって怒りますよ』
「あえてそういうふうに喋っているのに、まだ気付かないのかしら。桐山を怒らせることによって、初めて私
の怒りは相殺されるの。私だってね、できれば直接、誰でもいいから殴りたいところなのよ。それを暴言だ
けですませてあげてるんだから、むしろ感謝すれば?」
『あー、ハイハイハイハイ! ったくアンタって人は……いい性格してますよ』
「ハイは一回にしておきなさい桐山。で、私の話は理解した?」
『ええまあ、皇城先輩が、とんでもねえシスコンだってことはよく分かりました』
「な……!」
後輩の指摘を受けた瑠璃は、絶句して――
「なんでそうなるのよッ!! 貴方いままで何を聞いてたの!?」
受話器に怒鳴った。
『いきなり叫ばないでくださいよ。俺の鼓膜を破壊する気ですか』
「うるさい! いいからさっさと答えなさいよっ!」
急かされた誠人は『こほん』と咳払いをして、
『だって、整理するとこういうことでしょう。@今朝、妹と仲良くしたくて話しかけたら、憎まれ口を叩かれた。
そして先輩はキレた。A妹の髪型が自分の真似だと思って喜んでたら、実は九条院に褒められたからだ
った。そして先輩はキレた。B妹をたぶらかした野郎のことを妹本人に問いただしたら、そいつと比較され
て足元にも及ばないとか言われた。そして先輩はキレた。Cぶちキレて妹をぶっ飛ばそうとしたけど、結局
できなかった』
一拍をおいて、彼はこう締めた。
『――どう考えても、妹大好き過ぎでしょうが。バカでも分かりますよ』
「そんなこと……ッ!」
『ないってこたないでしょうよ。アンタいつも男も女も関係なくボコボコぶん殴ってんですから。ムカつく妹だ
け殴れねーってのは、おかしな話じゃねえですか』
「ち、違うのよ……それはシスコンとかじゃなくて……妹を、殴れるわけ、ないじゃない」
瑠璃は言葉を彷徨わせながら、言い訳がましく呟く。
「だってあの子――瞑もね、昔はあんなんじゃなかったのよ? 子供のころはすっごく甘えんぼで、いつも
『おねーちゃん』『おねーちゃん』って、私の袖を掴んで離さなかったくらい。……あの頃は、本当に可愛い
妹だったのよ? 見た目以外も。だから、その……また昔みたいになれればって……思うでしょう、普通。
そう、普通でしょそんなの。だから違うの。シスコンとかじゃないの。分かる? 分かるわよね私の言ってる
こと」
『……いや、それは……まあ、普通ですね、はい。OKデス、そーゆうことで』
「なんか引っかかる言い方ね……ホントに分かった?」
いやいやマジで了解しましたよと誠人は言った。
『……しっかしそりゃあ、いまの姿からは、想像もつかん話ですね……どうしてまた、あんなんなっちまった
んです?』
「人の妹をあんなん呼ばわりするんじゃないわよ。――どうしてそうなったのかまでは分からないけれど、
瞑がああいう性格になってるって気付いたのは、今年の四月。それまではずっと離ればなれに暮らしてた
から」
『ああ……そういやあ先輩って、小学校は東京の全寮制でしたっけね。たしか前にも聞きましたよ、小学校
を卒業してから親が理事長やってる皇城学院に入学したって。なるほど、妹さんが入れ替わりで東京に行
っちまったから……でもさすがに、夏休みとか正月には会ってたんでしょう?』
「それが……ずっとどちらかが用事で来られなかったりで、結局まる四年くらいかな……会ってなかった
の」
うんざりと目を眇める。
「…………で、ようやく会えたと思ったらアレよ。ほんっっと糞生意気になっちゃってもう。最初の一ヶ月は、
ずっと偽物なんじゃないかって疑ってたわ」
あんな毒舌小悪魔は、断じて瑠璃の知っている瞑じゃない。
あの可愛かった妹は、どこに行ってしまったのか。
もう二度と逢えないのだろうか。
口ではガミガミとやり合いながらも、そんな寂しさを感じていたのは……事実だった。
「いったい東京であの子の身に何があったのかしら……」
『やー、話を聞いてると、年上の女に懐くところとかに名残はあるみたいですし、別段何があったってわけ
でもないんじゃないですかねえ。だって明らかに血筋ですよあの性格。口汚いところとか、すぐ人を攻撃す
るところとか、誰かさんにそっくりじゃないですか』
「るっさいわね!? 殺すわよ! だったら百歩譲って瞑の性格は地だってことでいいわ。でも、だったらど
うして私を差し置いて、他のヤツに懐くのよ! あの子の姉は、私なのよ!? ――その、九条院アリス?
そんなヤツじゃ絶対ない!」
『そりゃあもちろんそうですけど。ただ、妹さんが九条院を慕うのはそれほど不自然じゃあありませんよ。実
際、あいつは凄いヤツですし』
「ふうん、イヤに肩を持つじゃない? ははぁん、さては貴方、その子が好きなんだ?」
粘着質に詮索すると、誠人はあっさりとこう答えた。
『まあ、そうですね。皇城先輩が俺のことを好きなくらいには』
「……チッ、言うじゃない、桐山のくせに。で、どんなヤツなの、その九条院とやらは。聞いてあげるから、
教えなさいよ」
誠人はアリスについて、詳しく説明をしてくれた。
それを聞き終えた瑠璃は、顎に手を添えて感想を述べる。
「……その子、私とキャラ被ってない?」
『いやいやいやいや! 被ってませんて、ぜんぜん! なに妄言吐いてんすか!?』
そのありえないみたいな強硬な否定っぷりが、ひどくカンに障った。
「なによそれ! 私の方が劣ってるって言いたいわけ!?」
『いや、どっちが上とかじゃなくてですね、皇城先輩と九条院じゃあそもそも種類が違うっていうか……』
「ハァ? 何かもっと分かりやすいたとえで言いなさいよっ」
『漫画でたとえると「エアマスター」と「ローゼンメイデン」くらい違います』
「宮田の影響で、段々言動がオタクっぽくなってきてるわよ貴方。私は寡聞にしてその二作をよく知らない
から、リアクションは次に会ったときまで保留しておくけれど」
『ちなみに「エアマスター」ってのは、ガタイのいい女子高生が主人公の傑作格闘漫画です』
「OK、いま殺すわ。そこから一歩たりとも動くんじゃないわよ」
『冗談でしょう。電話が切れた瞬間に逃げますよ』
ぶっきらぼうに言い捨てる誠人。
瑠璃は眉を顰めて言ったものだ。
「最近のアンタはどうしてそう、私にだけそんなに無礼千万なのよ!? 他の奴らにはもっと丁寧に接して
いるくせにっ。偉大なる先輩への敬意が足りてないわ!」
誠人は苦笑して『すんません』と詫びた。嫌悪や侮蔑から無礼を働いているわけではない――短い言葉
しか発してないのに、どうしてかそれが伝わってくる。
『白状しちゃいますけど、皇城先輩と話してると、いつも懐かしい人を思い出しちまうんですよ。似てるんで
すよね……性格とか、色々。それで、なんか馴れ馴れしいクチきいちまうんです。申しわけない、反省しま
すよ……これからは気を付けますんで、許してください』
遠い日々を思い返しているかのような、しんみりとした語り口だった。
瑠璃もさすがに威勢を削がれてしまう。
自分に似ている人について……少し照れながら聞いた。
「……ん、そういうことなら、別に、無理して直さなくったっていいけれど……。あの、聞いてもいい? その
人って……桐山の初恋の人とか、そういう……?」
『いや、ウチのバーチャンなんですけどね』
「ブッ飛ばされたいのアンタ!」
『ははっ、そういうところがほんとそっくりです。無理して直さなくていいって言っていただけるんなら、実のと
ころ嬉しいすね』
「たくもう……!」
昔好きだった人とか、そういうのだとばかり思ったら、よりにもよってお婆ちゃんだなんて……失礼してし
まう。
まあ、誠人も悪気があって言ってるわけではないので、瑠璃の怒りは持続しなかった。
「ていうか初恋で思い出したけれど、桐山、貴方、宮田とはうまくいってるの?」
『うまくいくとは?』
「だから、付き合ってるんでしょ?」
『なっ、なんでそうなるんですか!? ありえないですよ!』
「嘘? ほんとに?」
話題になっている宮田とは、フルネームを宮田怜奈(といって、誠人と同じクラスの風紀委員だ。
瑠璃にとっては、後輩であると同時に委員会の部下でもある。
とても背の高い、独特の性格をした問題児だった。
誠人と怜奈が付き合っているというのは、暗黙の了解みたいなものだと思っていたのだが……
誠人いわく、違うらしい。
『ほんとですって……勘弁してくださいよ』
「ふうん、意外ね。とっくに付き合ってるものとばかり思ってたわ」
くすくすと笑う瑠璃。
誠人はため息を吐いた。
『ホラ、俺は背が低いでしょう。だから付き合うんだったら、できれば自分よりもちっこい子がいいんです
よ。あんなバカでかい女は、正直無理ですって』
「悪かったわねバカでかくて!? 好きで背が高くなったんじゃないわよっ!!」
『なんでそこで先輩がキレてんすか!? 怜奈の話ですよ!?』
「どうせ私は175センチあるわよ! その辺の男子なんかみんなチビに見えるわよ! 寄ってくるのは女
の子ばっかりよ! ああもうっ! 男子って、どうしてロリコンの変態ばかりなのかしら!」
『……すんません。なんか、ほんとすんません』
瑠璃の逆鱗に触れてしまった誠人は平謝りだった。
それから少し間があいて、
『で、皇城先輩、話を戻しますけど……妹さんと仲悪いって、本当にそうなんですかね』
「は、どういうことよ?」
『先輩みてえに思ったことが全部そっくり顔に出て、喋りたいこと片っ端からぶちまけちまうような人ばかり
じゃねえってことですよ。憎からず思ってる相手に素直になれないなんてのはよくある話でしょう。……や、
本来俺ごときが言うまでもないことなんですが。誰しも自分のこととなるとどうにも周りが見えなくなりがちで
すからね』
「ふん」
彼の言い分には一理ある。瑠璃も最上級生として、風紀委員長として、他人から相談を受けることはよく
あるから、実感としてわきまえていた。しかし――
「でもね桐山、あの瞑よ? あの小悪魔のどこにそんな可愛げが存在するっての?」
『可愛いじゃないですか』
「黙りなさいよロリコン。変態野郎の好みの話をしてるわけじゃないの。たいして私たちのことを知りもしな
いくせに、いい加減なこと言うんじゃないわよ」
『俺が変態かどうかはさておき、結構自信あるんですけどね。妹さん、そんなに悪い子じゃありませんて』
「眼球が腐食してるんじゃないの貴方!?」
『別に妹さんが好みだから擁護してるわけじゃねえですよ。確かに俺は、妹さんのことはそんなによく知り
ませんけど、皇城先輩にはもう三年も世話になってますからね。それなりには知ってるつもりです。その上
で言わせてもらいますと――』
誠人は真剣な口調で、
『皇城先輩みたいな姉貴を、嫌いになれるわけがない――と、俺は、そう思うわけです』
「…………ふん、なによ、いきなり持ち上げて」
そんなに真面目に言われたら、どう返していいか分からなくなるじゃないか。
言った当人である誠人も、自分の台詞に照れてしまったらしく、言葉を彷徨わせているようだった。
『まあ、なんですか……その、だから、あれですよ。妹さんだって、そんなに先輩のことは嫌っちゃいないと
思うんで……』
「――分かった。そうね、貴方の口車に乗って、もうちょっとだけ足掻いてみることにするわ。難しそうだけ
れど、昔のあの子に戻ってくれるなら……そのくらいなんでもないもの」
『俺としては今の妹さんのままでも、悪かないと思うんですが。昔の性格に戻っちまったら、残念な気もしま
すね。できれば現状の性格のままで仲良くなってくださいよ』
「なんで私が貴方の異常性癖のために遠慮しなきゃなんないのよ!? ――まったく、付き合ってらんない
わ! もう切るからねっ!」
『……あの、自分がもの凄い勝手なこと言ってるの、自覚してます?』
「なあに? 文句があるなら言ってみなさいよ」
そう凄むと、誠人はため息を吐いた。
『まあ……俺も、そんな先輩のこと、実はけっこう尊敬してるんですけどね』
「な……」
強烈なカウンターを喰らった瑠璃は、絶句してしまう。
酸欠の魚みたいに口をパクパクさせている瑠璃に、誠人は実にあっさりとした口調で『ああ、そうだ。一
つ言い忘れてました』と言った。
『夏の陸上大会、頑張ってください。観戦にゃあ行けませんが、応援してますよ』
†
瑠璃は生徒会とは別に、陸上部に所属している。結果がどうあれ、次の大会が最後になるだろう。
むろん狙うは優勝あるのみだ。
トレーニングルームで身体をほぐし、夕方のロードワークを終えて汗を流す。今日のメニューを終えた瑠
璃がリビングルームでくつろいでいると、妹が帰ってきた。部屋に直接向かわず、瑠璃のいるリビングに入
ってくるなんて、何か用でもあるのだろうか。
一瞬、妹の今朝の態度がフラッシュバックして憤怒が湧き上がってきたが我慢。
OK、レディはそう簡単にキレたりしない。可愛い妹を取り戻すため、お姉ちゃん頑張る。
瑠璃は普段の自分らしからぬ花のような微笑で、妹を迎えた。
「おかえりなさい、瞑」
「あら姉さま、まだ生きてらしたんですね――ところで部屋がくさくないですかあ? 類人猿が撒き散らした
汗くさい体臭のせいで、わたしのお鼻が腐り落ちそうです。どうしましょうか?」
「まあ大変。腐食する前に切除して差し上げるから、こっちへいらっしゃいな」
数秒前の決意が枯れ葉のごとく吹き飛び、口から毒が発射される。
どうしていつもいつもこうなってしまうのだろうか。いったい誰が悪いのだ? この口か?
分かっていても止まらない。止められない。
それから数分間に渡って、豪勢なリビングで罵詈雑言のハリケーンが吹き荒んだ。
さすがに喋りすぎて疲れ、お互いに黙り込む。
瞑はムッとした顔のまま、スタスタこちらに歩いてきて、隣にすとんと腰掛けた。子供っぽいデザインのハ
ンドバッグと、服飾店の紙袋を足元におく。三人掛けのソファに、姉妹が並んで座る形になった。
ちらりと横目で妹を見ると、きゅっと三角形に押し上げられた下唇が、とても愛らしい。
「むう」
黙ってさえいれば、どんな表情をしていたって可愛いのだ、この子は。
黙ってさえいれば。
もちろん、そうではないからこそムカつくわけだが。可愛さ余って憎さが百倍とは、まさしくこのことだっ
た。胸でくすぶる憤りを我慢し、再度話しかけてみる。
「ねえ瞑、今日はどこに行ってきたの? その九条院さんとやらと」
「姉さまには関係ありません――」
ツンと、視線を逸らす妹。
瑠璃は、ひゅうう、と深呼吸をして自分の毒舌を押さえ込んだ。
(落ち着きなさい、クールになるのよ皇城瑠璃。この程度でへこたれてはいけないわ……!)
こめかみをヒクつかせながら、瑠璃は自らのヒステリーと戦った。自分の沸点が低いことは自覚している
し、公の場でそれを抑えることもそれほど難しくはない。
なのに……相手と心の距離が近ければ近いほどに、勘気の枷は緩み、口は毒を紡ぎ出す。
悪い癖だ。だけどそれでも、剥き出しの心を無関心という膜で覆ってしまうよりは、いい。
本当に仲良くしたい人間とは、ありのままの自分で接したい。
心を凍らせずに勘気を抑えるのは、とても難しいのだけれど。
「まあそう言わず、久しぶりにお姉ちゃんとお話ししましょうよ。ほら私たち、貴女が家に帰ってきてからず
っとお互い避け合ってたでしょう?」
「……ど、どうしたんですか姉さま? 何か悪いものでも召し上がったんですか?」
瞑は大きな瞳をまんまるに見開き、戦くように言った。姉の殊勝な態度に、驚いたらしい。
「やだ……気持ち悪い。恐いですう」
「アンタねえ、この私が優しくしてりゃあ、ずいぶんとつけあがるじゃないの。いいから私と話しなさいよっ」
我慢は一分も保たなかった。ずっとこの性格で十八年すごしてきたのだ、いきなりねじ曲げようったって、
どだい無理な話ではある。開き直って凄んでしまったが、意外にも瞑は了承した。
「べつに構いませんけど?」
「あ、あらそう?」
「ふん、どういう風の吹き回しか知りませんけどぉ――まあ、たまには姉さまに構ってあげないと可哀想で
すからね」
瞑は流し目で蔑んでくる。
仕草といい口調といい、どうしてこうもカンに障る喋りかたができるのだろうか?
自分だってそりゃあ相当なものだと思うが、その瑠璃の目から見ても、この妹の性格の悪さは半端じゃな
い。どのくらいひどいかって、もしも瞑が小説の登場人物だったなら、出版にあたって台詞をことごとく修正
せねばならないくらいひどい。
それでも。
仲良くしたいと思うのだ。
たった二人きりの、姉妹なのだから。
「その紙袋、このへんのお店のじゃあないわよね? 遠出したんだ?」
なんとか平常の声で話題をふると、瞑は慌てて紙袋を持ち上げて、ガサゴソと背中に隠した。
「なんで隠すのよ」
「なんでもないですぅっ」
顔を真っ赤にして、ソファの上で、じりじりとさがっていく瞑。その様子がたいへん萌え萌えだったので、瑠
璃は『見せなさいよっ』という台詞をなんとか飲み込むことに成功した。
ここで会話を終わらせてしまうわけにはいかないのだ。
「なに買ってきたんだか知らないけど、別に無理矢理みたりしないわよ。こっちきなさいってば」
「ヤーです。姉さまは信用できません」
そういうことを言うから、余計に見たくなってくるのだ。どうしてそれが分からないのだろう?
瑠璃は肩をすくめた。
瞑は気を取り直して話しかけてくる。
「で、御存知のとおりわたしは九条院先輩と楽しくデートをしてきたわけですけれど。姉さまは今日、何をし
て過ごされたんですか?」
「今日? 朝と夕方に走り込みに行ったけれど、あとは家にいたわ」
「一人寂しく?」
「余計なこと言うわねえ貴女!? そうよ、悪かったわね! ふん――別に寂しくはなかったわよ。桐山と
電話したりもしてたし」
「ああ、桐山というと、フロド先輩のことですか」
「私の後輩に妙なアダ名をつけてんじゃないわよ」
「姉さま……まさかアレとできているわけじゃありませんよね? 絶対イヤですよわたし、桐山先輩を兄さま
と呼ぶ羽目になるのは」
「な……なにバカなこと言ってんの!? どうしてちょっと電話したくらいでそういうことになるのよっ!!」
かっ、と頬を紅潮させて、瑠璃は否定した。
しかしこの分だと、瞑はよっぽど誠人のことが嫌いらしい。確かに彼はあまりルックスのいい方ではない
が、中身はかなりいいやつなのに。別に妹とくっついて欲しいとは思わないけれど、不憫な話ではあった。
「怪しいものですけれどね、まあいいとしましょうか。姉さまには現状、まったく脈がないとはいえ、他に目当
ての方がいらっしゃるようですし。いきなりくっつくことはないでしょう」
「ちょっと貴女、さりげなくまったく脈がないとか勝手に決めつけてんじゃないわよ!?」
瑠璃の怒鳴り声などどこ吹く風というふうに、瞑は指を一本立てた。
「もしもこれが恋愛小説とかだったら、今後の展開として考えられるのは、ひどく振られて凹んだ姉さまを、
桐山先輩が持ち前のおせっかいを発揮して慰めてしまうという黄金パターンですよね。頼りになる後輩に、
哀れ姉さまはハートを射止められてしてしまうわけです」
「だから、私の失恋を前提として話を展開させるのをやめなさいよ」
「まあ桐山先輩が主人公で、宮田先輩と姉さまがヒロインじゃあ、ビジュアル的におおいに不安が残ります
けれどね。ルックスが平凡以下の主人公と、やたらガタイのいいヒロインズとか、流行に喧嘩売りすぎで
す。斬新といえば聞こえはいいですが、間違いなく売れませんよそんな本」
「こっの……! 他人事みたいに言ってるけどねえ! その妄想企画を仮に商業流通レベルに鍛え直すと
したら、メインヒロインはどう考えてもアンタなんだからね!」
ビシィッ!
瑠璃が妹を指差して宣言すると、瞑は一瞬ポカンとしてから、大口を開けて絶叫した。
「はぁあぁぁぁぁぁっ!? どーしてそうなるんですかぁッ!?」
「だって桐山はロリコンだもの」
あ、バラしちゃった。
「サイアク――ていうかわたし、桐山先輩のこと死ぬほどキライですから、ヒロインにはなり得ませんよっ」
「『だからこそ』って向きもあると思うんだけどね」
「絶対絶対、願い下げですぅっ!!」
とまあ、そんな感じで。
久方ぶりの姉妹の歓談の時間は、それなりに楽しく過ぎていったのだが――
「はッ、やっぱり姉さまごときと話してても、何一つ得るものはありませんでしたね。部屋で勉強でもしてた
ほうが百倍ましです」
べぇっと舌を出して、瞑はリビングから出て行ってしまう。
結局、最後はいつものように喧嘩になってしまったのだ。
「チッ――クソ、うまくいかないもんね」
苦虫を噛みつぶしたような顔で、妹の背中を見送る瑠璃。まあ、短い時間とはいえ、歓談する機会を持
てたのだから、今日はこれでよしとしておこう。
瑠璃は前向きだった。
以前のように仲睦まじい姉妹に戻るという目的を、まだ諦めたわけではない。
だって妹とは、同じ屋根の下で暮らしていて――また明日も明後日も、逢えるのだから。
まあ――きっとまた、仲良くしたいなと内心では思いながら、憎まれ口を叩き合うのだろうけれど。
「はぁっ……なんだかな」
ゆるりと立ち上がって伸びをすると、ふと足元に紙袋を見付けた。
瞑が忘れていったものだろう。
「ばっかじゃないのあの子、あんなに大事に隠し持ってたくせに」
ニヤリと笑う。妹があれだけ隠す代物を、この目で確認してやろうと思ったのだ。
躊躇? 罪悪感? 何それ?
無造作に紙袋に手を突っ込んで、中身を取り出す。それは――
「これ……って」
それは、ブランドもののスポーツウェアと運動シューズだった。
瞑のものではない。靴も服も、あの子のものにしてはサイズが大きすぎる。
つまりこれはまぎれもなく、これから高校最後の陸上大会に臨もうとしている――
「私、の……?」
はらりと、メッセージカードが落ちてくる。
『センスのない姉さまへ――
毎朝毎朝、あーんなダサい恰好で走られるとわたしが恥ずかしいので、まともな服を買ってきてあげまし
た。それを着て、せいぜい無駄な努力を続けてくださいね。
PS.大会当日は、姉さまが無様に負ける姿を、必ず見物しにいってあげますから』
「…………」
瑠璃はぽうっとして、掲げた靴を眺めていた。やがてポツリと呟く。
「……なによ、あの子。……ほんと、ムカつくわ」
けれど明日からは、ちょっとだけ、ロードワークが楽しくなりそうな予感がした。
【皇城姉妹のとある一日】 ―― END
|